膀胱腫瘍体験談

膀胱癌について学ぶ

医師推奨病院で受診した後も、継続して膀胱癌についてインターネットで勉強を続けた。

1.インターネットで膀胱癌と前立腺肥大を調査(11月6日~10日)

(1)膀胱癌について
・約1週間、毎日、膀胱癌診療ガイドラインと膀胱癌論文を読み解く。
 読破した論文の累計数は約30本。
・患者の体験報告(約50件)を読んだが、治ったと報告した人は2人だけ。
 再発者や膀胱全摘者多く、5年再発率が5~6割であることを実感した。
・抗癌剤、深達度(Ta、Tis、T1、T2、T3、T4)、グレード(G1・G2・G3、異型度など)
・大学病院などにおける治療法調査 (ガン研、京大、大阪医科大、大阪大学など) 
・多数の論文 (抗癌剤、「癌の形状、異型度、深達度に関する各種の統計解析論文」等)

(2)前立腺肥大について
・患者の体験報告。
・手術障害
・手術直後の症状 (疼痛、発熱38~40度、血尿、腫れ、逆行性精射など)
・後遺症 (尿道狭窄、膀胱頸部硬化症、勃起障害、死亡、尿漏れなど)

ガン研のホームページ、各大学のホームページ、各種膀胱癌論文、製薬会社のホームページ等から学んだ内容は以下のとおりです。

2.癌の発生

(1)発生機序
身体を構成している細胞には寿命があり、“分裂と増殖”によって新しい細胞が生み出されるとともに、古くなった細胞は“アポトーシス”によって、順次、自然死していきます。
そして、これらの増殖、増殖終了、修復、細胞老化、細胞死などの活動は、遺伝子の中に組み込まれている制御機構によって調節されております。
また、細胞が増殖する時、新しい細胞の遺伝子は元となる細胞の遺伝子を転写することで生成されます。

しかし、遺伝子を転写する際、癌誘発物質を原因とする転写ミスが起きて、遺伝子が傷ついた異常な細胞が発生することがあります。
発生した異常な細胞は、以下のステップで、「がん」となって身体を蝕んでいきます。

「異常な細胞の発生」→「異常な細胞の増殖」→「腫瘍形成」→「転移・浸潤」

(2)膀胱癌
膀胱癌を誘発する物質の1つに煙草があり、喫煙者は非喫煙者の4倍、膀胱癌に罹りやすいと言われております。
私は、医師から膀胱癌の疑いがあると宣告された日から「私のようにならないために、家族に喫煙者がいたら止めるように伝えて下さい」と友人に言い続けております。
   

3.膀胱癌の形態

(1)形態
膀胱癌の形態は、乳頭状・有茎性、非乳頭状・有茎性、乳頭状・広基性、非乳頭状・広基性、平坦型、潰瘍形成型に分類することができます。

膀胱癌のグレード(異型度)や深達度は、最終的には、切除した癌組織を病理診断した後で確定されます。しかし、膀胱癌には、その形態に基づき、グレードや深達度をおおまか(確率論的)に推測できる特徴があります。

そのため、自分の膀胱癌の形態を知ることはとても重要です。

(2)病期
表在性膀胱癌は、癌細胞が膀胱癌粘膜に留まっている癌(Tis、Ta、T1)です。
浸潤性膀胱癌は、癌細胞が筋層を超えて浸潤している癌(T2a、T2b、T3a、T3b、T4)です。

膀胱がんの病期
膀胱癌の病期(日本化薬株式会社「目で見る膀胱の病気」より

4.深達度

 自分の癌が組織のどこまで進行しているのかを知ることは、今後の治療方針や生き方を決める上でとても重要です。
そのためには、以下の分類と説明を覚え、医師の説明をきちんと理解した上で、自分の希望を医師に伝える必要があります。
                                                                                                                                   
深達度 説明
Ta・乳頭状非浸潤癌、乳頭状に隆起しているが粘膜上層部(移行上皮粘膜)に留まっている癌。
・基底膜(移行上皮粘膜と粘膜下結合組織の間の幕)を超えていない状態なので、転移する頻度は低い。        
Tis ・皮の表面を横に広がっており、上皮内がん〔CIS〕と呼ばれる癌。
・上皮の表面に横に広がっているTis は、癌がどこまで広がっているか見分けにくく切除が難しいため、取り残しが起きやすい。また、Ta よりも浸潤がんへ進行する可能性が高く、注意が必要。
・治療はBCG膀胱注入療法が第1選択。奏効率は70~80%と高いが、その後、10~20%が筋層浸潤性癌に移行。        
T1・筋層には浸潤していないが粘膜下結合組織まで達している癌。
・基底膜を越えて筋層に近い粘膜下結合組織まで食い込んでいるタイプなので一旦治療しても将来的に筋層に浸潤して再発する可能性が高い。        
T2・膀胱の筋肉層に浸潤している癌。
・T2aは筋層の半ばまで浸潤し、2bは浸潤が筋層の半ばを越えている。        
T3・筋肉層を超えて膀胱周囲の脂肪組織に浸潤した癌。
・T3aは顕微鏡レベルで膀胱周囲脂肪組織への壁外浸潤が想定される。T3bは肉眼で見て膀胱周囲脂肪組織への壁外浸潤が想定される。        
T4・前立腺、精嚢、子宮、膣、腹壁などの近接臓器に浸潤(T4a、T4b)している癌、もしくはリンパ節や肺、肝、骨等の遠隔臓器に転移している癌。
・T4aは前立腺、精嚢、子宮あるいは腟に浸潤し、T4bは骨盤壁あるいは腹壁に浸潤している。        
なお、進行度は筋層非浸潤がん(Tis、Ta、T1)と筋層浸潤がん(T2、T3、T4)に大別できます。また、数字はステージを示します。
    

5.膀胱癌の高再発率とグレードアップ

 他の癌と比較した場合、再発率が高いこと、再発した場合にグレード(GRADE,G)アップする可能性があることの二つが膀胱癌の特徴です。

(1)高再発率
膀胱癌の特徴は手術後の10年再発率が約7~8割と高いことです。一般論で言えば、癌は5年経過すれば一安心であると言われております。しかし、膀胱癌は5年を経過したとしても再発し続けます。中には、10年を経過してから再発する人もいるくらいです。
・なお、膀胱癌初発者が初めて手術した場合の5年生存率は85%、グレードが高い人が再発した場合の5年生存率は3割程度だと言われております。

(2)グレードアップ
 (a)グレード
 癌の悪性度を示す分類としてグレードがあります。グレードとは正常細胞と比較した異型化の度合いを示したものであり、採取した細胞を病理検査して診断します。
・異型度 = 腺管形成スコア + 異型度スコア + 核分裂スコア。

・G1(悪性度は低い。細胞異型度,構造異型度とも1のもの)
・G2(悪性度は中。細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が2であるもの)
・G3(悪性度は高い。細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が3であるもの
・Low Gradeは悪性度が小さい癌、High Gradeは悪性度が大きい癌。

 (b)グレードアップ
 膀胱癌は再発した場合、初発の膀胱癌よりもグレードアップという特徴があります。
また、再発した膀胱癌全体に占めるグレードアップ比率は3~4割に達するとの医学論文もでております。

 そのため、手術を受ける場合、単に手術実績件数が多い病院を選ぶだけでなく、再発性・グレードアップ・進展性を考慮した上で適切な病院を選ぶことが大切だと思います。
私の経験を踏まえて言えば、高度な設備を備え、手技レベルが高い病院を選ぶのが良いと思います。

 さらに、膀胱癌診療ガイドラインに記載されているように、定期的な診断(手術後の2年間は3ケ月毎、3~5年間は6ケ月毎、6~10年間は年一回)が必須となります。ですから、病気との長い付き合いになると考えて、長期戦を覚悟する必要があります。

6.膀胱癌の再発原因を理解する

 膀胱癌が再発する原因は複数ありますが、主要なものは以下のとおりです。

(1)膀胱に癌化ポテンシャル細胞が複数存在する場合、手術でできた傷口を修復するための組織再生活動の活発化に伴って、癌化ポテンシャル細胞が急速に成長し始める。
 膀胱内は発癌誘導物質に継続的に暴露されるために、複数の癌が時系列的に発生する可能性がとても高いと言われております。
「複数の癌が時系列的に発生する」を例えて説明すると、膀胱癌には(畑に播かれた種に、今年芽が出るもの、来年に芽が出るもの、その次の年に芽が出るものがあるように)時期をずらして次々と発生するものがあるということです。

(2)手術の際に癌細胞の取り残しが生じた場合、手術の際にできた傷口を修復するための組織再生活動の活発化に伴って、取り残された癌細胞が急速に成長し始める。
 いわゆる取り残しですが、分かっていてもやむをえず執刀医が取り残す場合と、全て取ったつもりでも結果的に取り残す場合の二つがあります。

  (a)多数の癌細胞があり、とても手術では全てを取り切れない場合、あるいは、癌の深達度が深くて根がどうしても取り切れない場合などです。
 執刀医としては、手術で取りきれるものを全て取り切った後、残りはBCGなどで対処するつもりです。

 (b)執刀医としては全ての癌細胞を切除したつもりでも、実際には取り残しがあった場合です。
 通常、執刀医は、ガイドラインに準拠して、確認のために、必ず、膀胱筋層を薄く切り取って検査組織を採取します。病理診断医はその採取組織を顕微鏡で確認して浸潤していないことを確認します。取り残しがあれば、2nd TUR-Btが実施されることになります。
 当然ですが、顕微鏡でも確認しきれない癌細胞が残れば、やがて再発します。だから、私は、自分の担当医に「広く、深く、切除して下さい」と言い続けました。

 私の友人は頭頚部癌になり、取り残しがあったために、やがて、ホスピスで逝去するに至りました。
彼に面会するたび、彼の笑顔の裏を思いやって、幾度となく、「もし、最初の手術での取り残しがなければ・・・」と無念な思いに駆られました。

(3)TUR-Bt手術の際に膀胱内に散布された癌細胞が膀胱の粘膜の間に入り込み、癌細胞として増殖する。
 そのため、膀胱癌診療ガイドラインでは、術後24時間以内の抗癌剤単回膀注が推奨されております。

 ただ、過去の癌患者体験談の中には、地方の病院で手術を受けられた方で、手術後、初の3ケ月定期診察で32個の癌が発見された事例(2014年)もありました。
その方は、「うちの病院では手の下しようがないから他の病院に行ってください」と言われて、大学病院に転院しました。大学病院では、最初に手術した病院とは異なり、膀胱癌切除手術の際にきちんと抗癌剤を膀注したそうです。

 確かに、抗癌剤の膀注は推奨項目であり、医師の判断で実施しないこともありえます。しかし、それは手術ミスで膀胱に穿孔が生じた場合などに限定されるべきであり、抗癌剤の膀注が基本であると考えます。
信じられないような話ですが、診療ガイドラインを重視しない医師がいることも現実のようです。
 
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